2024年07月03日
令和6年7月2日(火曜日)に医学部臨床講義棟2階で開催された「令和6年度 第2回(通算 第31回)香川大学医学部リサーチ・クロストーク」において、大学院医学系研究科医学専攻の大学院生、李 高鵬さんと叶 娟娟さんが優れた学術成果を発表され、医学部長より「Best Presentation Award」が贈呈されました。なお、令和6年度第1回のリサーチ・クロストークでは、大学院医学系研究科医学専攻の井上依里さんとNafisa Tabassumさんの2名が「Best Presentation Award」を受賞されています。
「香川大学医学部リサーチ・クロストーク」は、医学部内の研究活動を活性化することを目的として令和2年度より定期的に開催して参りましたが、今年度より、本学部の研究マインドを早期にかつさらに広い裾野で醸成していくことを目的として、学部生・大学院生の発表を推奨しています。この取り組みを通じて本学部の教員、学部生、大学院生が交流することにより、これまでと違った視点や価値が生み出されるものと期待しております。
1.受賞研究発表演題及び発表概要
・李 高鵬(大学院医学系研究科医学専攻 大学院生)
演題:肺動脈平滑筋細胞増殖シグナルを標的とする肺高血圧症の新規治療戦略
概要:肺高血圧は肺動脈平滑筋細胞の過剰増殖を特徴とする難治性疾患である。冬虫夏草が産生するコルジセピンに肺動脈平滑筋細胞増殖に対する抑制効果と肺高血圧症モデルラットにおける病態改善効果を明らかにした。肺高血圧症における細胞老化の関与を明らかにするため、CDK阻害蛋白質p16を指標にして老化細胞を蛍光標識するマウスを用いた研究を続けている。
・叶 娟娟(大学院医学系研究科医学専攻 大学院生)
演題:糖鎖制御による新規膵癌治療の開発
概要:膵癌は、悪性腫瘍の中でも特に予後の悪いがんであり、その克服は現代のがん治療における大きな課題の一つである。特にその免疫抑制性の高い膵腫瘍微小環境が、免疫療法の障害となっている。我々はこれまでに、腫瘍マトリックスのリモデリングに関与するプロテオグリカン生合成を担う糖硫酸転移酵素CHST15を標的とした、新規治療法開発の研究を続けてきた。現在までに、マウス膵癌モデルにおいて、CHST15の抑制によりコンドロイチン硫酸E(CS-E)の発現を伴う間質の線維化を阻害し、膵癌の腫瘍微小環境における骨髄由来抑制細胞(MDSC)の減少とT細胞の再活性化によって腫瘍の成長を抑制することに成功している。さらに、CHST15遮断は、免疫反応が減弱している腫瘍流入リンパ節(TDLN)でのT細胞を再活性化することから、本研究成果はこれまでにない膵癌の効果的な免疫療法の可能性を示している。
2.贈呈式の様子